'25年5月3日:荒波に挑む、初トーイング・フォイル体験!

その日、空は青く澄み、海面は春の陽を浴びてきらめいていた。
だが、私の胸の中は静かではなかった。
――今日こそ、空を飛ぶボード「Foil」で、海面を切り裂く感覚を掴むのだ!

Wing-foilとは、ただのサーフィンではない。
風を翼で掴み、ハイドロフォイルという「水中の翼」が生み出す揚力で、
ボードが海面から浮き上がり、まるで飛行機のように滑空する。
一度浮けば、抵抗は激減し、音も、波も、遠のいていく。
――だが、そこに至る道は、容易ではない。

通常の練習では、Wingの操作とボードのコントロールを同時に覚えるため、
何度も転び、沈み、立ち上がってはまた落ちるという果てしない繰り返し。
それをショートカットできる“禁断の近道”がある。
それが「トーイング」だ。
モーターボートでFoilボードを引っ張り、浮いた状態のバランスを先に体得する。
――チートだと揶揄する者もいる。だが、理にかなった戦略だ。

私は、迷わずその道を選んだ。

小型ボートがうなりを上げて走り出す。
太いロープがピンと張り、ボードが引き出される。
最初は低速。波を切り裂く水音。海面を叩く衝撃。
ロープを握りしめながら、左右に揺れ、船と並走する位置を探る。
「よし、いける…!」と感じた瞬間、船が一気にスロットルを上げた。

そのとき――
ズッと、何かが抜けるように、ボードが水面から離れた。
重力から解き放たれ、空気の中を滑る。
たった数秒だが、世界が変わった。
波が消え、風の音だけが耳を切り裂く。
「これが……浮く、という感覚か!」

しかし、喜びは一瞬だった。
バランスを崩した瞬間、世界が反転する。
視界に青空、次に白い飛沫――ドボン!
冷たい海が全身を包み込み、息を呑む。
その高さ、約3メートル。
水面から1メートル浮き、その上に私の身長。
落下の衝撃で頭が真っ白になった。
気づけば、腕時計が…ない。
海の底へ沈んでしまったのだ。

「くそっ……!」
息を整え、もう一度。
何度も何度もトライする。
浮いては落ち、落ちては浮く。
指はしびれ、腕はロープに焼かれるように痛む。
だが、諦めるわけにはいかない。
ほんの5秒、10秒でも、ボードが浮き続けるその快感を掴みたかった。

やがて、夕暮れが近づき、トレーナーが手を振った。
「今日はここまで!」
ロープを外した瞬間、体の力が抜けた。
海の上に座り込み、息を吐く。
――正直、ほっとした。

想像をはるかに超える難易度。
自信があったバランス感覚も、海の力の前では無力だった。
浮くたびに落ちる。
しかし、その“わずかな浮遊の瞬間”に、確かに夢を見た。
海の上を飛ぶ夢を。

この挑戦は、まだ始まったばかりだ。
しばらく頭を冷やし、次のステップに備えよう。
だが、心の奥底では、もう知っている。
――私は、再びあの「浮く瞬間」を味わいに戻ってくるのだ。

トーイング体験後に、近くのお店で食べたペニンシュラハンバーガーがおいしかったです。

電車移動なのでビールも頂きました。

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