🌊 私がWingをやろうとしている理由

風を感じたい。
海の上で、自分の力で進むあの感覚を、もう一度取り戻したい。

30年前、私はウィンドサーフィンに夢中だった。
あの頃、海の上で風を掴み、一気に走り抜ける瞬間の感覚は、何ものにも代えがたいものだった。
けれど、家族ができ、仕事に打ち込み、気づけばその時間を遠ざけていた。

たくさんのお金をつぎ込んで買ったボードやセイルなどのギアも、実家の裏庭に置きっぱなしにしていたら、いつの間にか親に捨てられていた。しかも、そのことに何年も気づかないほどだったので、文句も言えない。

最近まではゴルフに熱中していて、月例競技会にも毎月出ていた。仲間とのプレーも楽しかった。
しかし、あの「風を受けて海を疾走する喜び」には遠く及ばない。
「いつかウィンドサーフィンを再開したい」――そう思い続けてきた。

そして今。
子どももほぼ巣立ち、人生のリズムが少し落ち着いた。
心の奥で、「もう一度、海へ出たい」という声が次第に大きくなっていった。

ただ、昔のウィンドサーフィンを再開するのは、少しハードルが高いと感じた。
大量のギアの管理、時間のかかるセッティング――若かったからこそできていたのだと思う。
気持ちは若くても、あの頃とは心も体も違う。
大きなセイル、大きなボード、セッティングや後片づけの手間。
そして何より、風が吹かないと何もできない。

一度プレーニングの快感を知ってしまうと、微風で走れない状態では物足りない。
将来、仕事を引退したら海の近くに住み、風の吹く日だけビーチでプレーニングを楽しむ。
さらに、南の島でプレーニング三昧――そんな夢を描いてきた。

でも、まだ埼玉に住み、フルタイムの責任ある仕事をしている今、どうしたらいいか。
悩む日々が続いた。
YouTubeで最新のウィンドサーフィン事情を調べる中で、私は驚く映像を目にした。

それは――ボードが完全に浮いて走っていたのだ。
「ウィンドフォイル」と呼ばれるらしい。
調べてみると、フォイルの揚力でフィンのプレーニングよりも速く走ることができ、
ワールドカップでもコンディションによってはフォイルを使う選手が増えているという。
時代は、いつの間にか大きく変わっていた。

さらに調べると、このフォイルボードはサーフィンやカイトサーフィンなど、
さまざまな分野にも広がっていた。
そして、翼のような「ウィング」と組み合わせた新しいスポーツ――
それが「ウィングフォイル」だという。

ウィングフォイルは、一言でいえば「いいことづくめ」だと感じた。

ウィンドサーフィンと違い、ウィングのセッティングと収納は非常に簡単だ。
ウィンドでは、①セイル本体、②マスト、③ジョイント、④ブーム、⑤ハーネスを組み合わせ、
しかも細かなセッティング調整が必要で、かなりの手間がかかる。
一方、ウィングは空気を入れるだけ。その空気圧が唯一のパラメータだ。

さらに大きな魅力は、微風でもプレーニングできること。
前述の通り、一度プレーニングを味わうと、それなしでは楽しめない。
ウィングフォイルでは、ウィンドサーフィンの約3倍プレーニングできる日があるという人もいる。
これは最高だ。

また、ウィンドサーフィンでは難易度の高いプレーニングジャイブも、
ウィングフォイルでは比較的容易にマスターできそうな気がする(推測)。

さらに、ウィンドサーフィンにも波に乗ったりジャンプしたりする「ウェーブ」系があるが、
私がやっていたスラローム(スピード系)とは道具も違う。
ウィングフォイルなら、スピードも波乗りも両方できそうだ(推定)。

つまり――

  1. セッティングと収納が簡単で時間がかからない
  2. プレーニングできる日が多い
  3. プレーニングジャイブをマスターできそう
  4. ウィングなら波にも乗れそう

この4つの大きなアドバンテージがある。
特に今の自分には、①と②がとても重要だ。

「これは、ウィングフォイルを始めるしかない!」
そう思うのは自然な流れだった。

私にとってウィングフォイルは、単なるスポーツではない。
風と自分をつなぐ時間であり、
人生をもう一度、動かし続けるためのエネルギーだ。

そしてウィングフォイルは、未来のスポーツでもある。
電動モーターも燃料も使わず、風と重力と自分の体だけで進む。
まさに「自然エネルギーを遊びながら体感する」究極の形。

私は今、仕事でもCO₂を出さないエネルギーの開発に携わっている。
その延長線上に、ウィングフォイルがあるような気がする。
地球に優しく、そして何より「気持ちいい」エネルギー。

だから、私はウィングフォイルをやることにした。
それは“若い頃の夢の延長”であり、
“今の自分の生き方そのもの”でもある。


基本はこうやって大海原を疾走したいです。


ウィングをoff(ニュートラルポジション)にすれば、サーフィンになります。

これはウィンドフォイルのシーンですが、フォイルの原理が学べます。